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2016/08/07 | あの日を描写する。

 

涼風至る(すずかぜいたる)


8/7〜11頃。



立秋(りっしゅう)


二十四節気第13節気、8/7頃。


暑い日が続く真夏の盛り。


一年で最も気温が高い日々だが


暦の上ではこの日から立冬(11月7日頃)の


前日までが秋。


厳しい暑さに時折、入り交じる秋の涼やかさ。


空を見上げれば秋特有のいわし雲も浮かび


時候の挨拶は


「暑中見舞い」から「残暑見舞い」に変わる。


立秋を過ぎれば、朝夕の風の中に


スッと入ってきた秋の気配を感じる。


咲き終わった花を地面に沢山落とす芙蓉(ふよう)の


一日花の様子に寂しさを感じて


今年の暑さともそろそろお別れだと気づく。

 



幼い日、母方の在所でのお盆の頃を思い出す。


畳の香しさに伴い、カチカチと時を刻む振り子時計。


静けさの中にも重みのある空間。


ハエ取りのテープが天井からぶら下がり、


木製の枠にガラスが組み込まれた引き戸の


古めかした音に懐かしさが溢れる。


今みたいな、猛暑は少なく穏やかでセミの声も


何故か涼しく感じる。


唯一の空調といえば扇風機。


優しく風を部屋中に送り、縁側に置かれた蚊取り線香の


ケムリを時折乱す。


口数の少ないおばあちゃんが、ゆっくりと


こっちを見る。


「大きくなったねぇ。」


内気な小さな少年は、返す言葉なく


ただただ、黙ったまま。


少しの沈黙が続くが、何故か温かく心地よい。


そして丸く正座していたおばあちゃんは、重たい腰を上げ


ゆっくりと自分の部屋に向かって歩き出す。


畳の目に足が擦って音がなる。


畑シゴトを終えてなのか、手拭いを片手に

 

腰の曲がった後ろ姿に風情ある光景だったとは、その時にはわかるはずもない。


何故なら、少年の中でおばあちゃんはおばあちゃんだったからだ。


それぐらいの理解だった。


いつの間にか、少年の前に戻ってきたおばあちゃんは、


ゆっくりと小さな封書を差し出す。


そして


「どうぞ。」


と手を震わせながら、口数の少なさがより温かみを増す。


戸惑いか、遠慮のココロもはたらいてか


なかなか受け取れない。


そんな躊躇する姿を見て察してくれたのか


いいんだよと言わんばかりに優しく微笑んでくれる。


背中を押され、ようやく受け取った少年。


掠れるくらいの小さな声で


「ありがとう。」


だが、おばあちゃんはまだ待っているみたいだ。


中をのぞくまで見届けたいのであろう。


おばあちゃんの注目に恥ずかしさを覚えながら


暫く経って、


これもまたようやく、


何だろうと期待を寄せながら中をのぞく。


何と五千円札。


しかし、


嬉しい気持ちと裏腹に恥ずかしさもあってか


気持ちがハッキリと伝えれない。その上内気な少年。


その始末に、か細い声で「ありがとう。。」とだけ。

 

と、


今思えば、何て罪な事をしてしまったのかと


悔やんでいる。

 

当然そうだろう、僕も娘にプレゼントを渡す時


最後まで見届けたい。


そこにはかけがえのない喜ぶ姿があるからだ。


大袈裟かもしれないが、その為にプレゼントすると言っても過言ではない。


飛び跳ねて喜びを表現すべきだったと。


それを見たおばあちゃんが喜んでくれるのならば。


と、大人になった今


罪だったあの日を責め立てる。


だってもうそれは、今ではどうしても伝えることが出来ないからだ。


今では、こうして当時の事を思い出し描写することで


大切な思い出として甦る。


それは本物かのようにその場に居る自分が見る事ができる。


そして、あの日の少年に


僕は言ってやりたい。


「大きな声で、飛び跳ねるんだよ!」と。

 

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